いぼの冷凍治療(冷凍、指で解凍を繰り返す方法について)
[2025年06月02日]
久しぶりの記事になりますが、今まで当然のようにやっていたけど、あまり根拠がわかっていないかった治療法について、お話しします

当院では尋常性疣贅(いぼ)について、基本的に冷凍治療を行っておりますが、その際、私はいぼを液体窒素で急速冷凍した後、指先で加温して解凍するという動作を数回繰り返しております。

こうやると治療効果が高まるとか、ウイルスが温度変化で破壊されやすくなる、といったことを聞いた覚えがあり、その後からこういうやり方になったのですが、実はそれをはっきり推奨、証明する文献や論文は見ておりませんでした。

今回、医療系サイトの記事を見ているうちに、それについての論文があることがわかり、見てみました。要約すると、

マウスによる冷凍治療の実験で、冷凍治療後に自然解凍した場合と急速解凍した場合を比較した結果、

  1. 急速解凍群では、自然解凍群に比べて顕著な組織破壊が確認された。

  2. 急速解凍によって皮膚内の酸化ストレスが増加し、好中球の浸潤(炎症反応)も促進された。

  3. 遺伝子発現解析でも、炎症や酸化に関連するマーカーの上昇が確認された。


文献)

Rapid thawing enhances tissue destruction in a mouse model of cutaneous cryoablation: Insights into oxidative stress and neutrophil activation
Sekiguchi, Akiko et al.
Journal of Dermatological Science, Volume 118, Issue 1, 9 - 17

ちょっと難しいですが、指で急速解凍した方が、治療効果が高まるという可能性が示唆されたということです。一方で副反応も強く出る可能性もあるため、必ずしもこの方法が推奨されるわけではないのだと思います。

近年、インターネットの普及により、情報が錯綜し、その情報の善し悪しが判断しにくい世の中になりましたが、皮膚科の診療を行っていく上で、科学的根拠に基づいて、いい医療を提供できるように精進いたしますので、患者様におかれましてもその点ご理解頂きますよう、よろしくお願いします。

 


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