Menu

東京都練馬区の皮膚科クリニック/テル皮膚科/皮膚科、小児皮膚科、美容皮膚科.


アタマジラミの診察、治療

2019年07月02日

去る6月8日、クリニックを休診させて頂き、日本皮膚科学会総会に参加してきましたが、日常診療にも関連した興味深い話を聞けましたので、それを元に少し記事を書いてみたいと思います。

今日のお題は、「アタマジラミ」です。

アタマジラミは人間の頭髪に絡まって寄生し、吸血して産卵を繰り返し、増える虫です。陰部に寄生してかゆみを起こす「ケジラミ」と混同する方がいますが、原則、頭にいるものはアタマジラミ、陰部にいるものはケジラミで、入れ替わることはありません。アタマジラミは基本的には髪の毛が接触することで虫が移ります。虫自体は吸血できないと2~3日で死んでしまいますので、人間の頭にへばりついていない限り生きていくことのできない虫です。

アタマジラミの成虫が約2~3ミリ、卵が0.5ミリですから、よく見れば肉眼で見つけることが可能です。シラミは吸血しながら産卵し、数を増やしますが、1日5~6個産卵し、一生のうちでは100個くらい産みますので、対応しないでいると、爆発的に増えてしまい、毛がシラミの卵だらけということになりかねません。

静岡で10年ほど診療していた私ですが、東京に出てきて一番驚いたのは、アタマジラミの患者さんの多さで、たまたま集団発生しているところの出くわしたのもあるかもしれませんが、やはり田舎よりもインドアでの行動が多そうなことや、人の密度が濃そうなこと、10年の間でもライフスタイルが変化したこと、治療薬に耐性のシラミが増えてきたこと、などが挙げられると思います。

さて、アタマジラミに罹患すると、皮膚科へ受診なさる患者様が多いです。だいたいは虫や卵を見つけて受診するわけで、診断というよりは確認という感じになると思うのですが、知っておいてもらいたいことは、

アタマジラミの確認や確定診断はできるが、処方できる薬はありません

ということです。治療には市販のスミスリンシャンプーなどを薬局で購入して行います。このシャンプーは人間にとっては比較的安全な薬剤で、かつ、アタマジラミの幼虫、成虫には効きますが、卵には効果がないため、孵化の周期に合わせて何回か治療していく必要があります。治療上や感染予防のポイントとしては

髪の毛は短ければ短いほどいいので、抵抗感がないときは切ってしまう。女の子でも、肩より下まで長くしているとほかのお子さんへうつす危険性も上がると思われるので、なるべく切るか、通常時は結ぶ、帽子をかぶるなどの対策が必要。

・説明書の回数でも理論上は十分なはずだが、実際には治りきらない方も多いので、回数を少し多めに使うことをお勧めする。

スミスリンの効かない、耐性アタマジラミもいる

薬が効かない耐性アタマジラミについては、物理的に除去する位しかなく、場合によっては丸坊主、ということにもなる訳ですけど、学会で聞いた話では、沖縄で見られるアタマジラミは非常に耐性率が高く、東京あたりはまだそれほどではない、ということが興味深かったですね。沖縄は元々海外からの流入が多い地域なのでということでしたが、病気を診ていく上で地域性も重要ということを再認識しました。